6歳前後のお子さんの下の前歯の後ろ側から歯が生えてきて、「歯が変なふうに生えてきた」と心配されて来院されるケースがよくあります。しかし、下の乳歯の前歯が後ろから生えてくること自体は、特に問題はありません。多くの場合、乳歯から永久歯への生え変わりは、放っていても正常に行われますが、中には注意が必要なケースもあります。
乳歯から永久歯への生え変わりの仕組み
乳歯から永久歯への生え変わりが起こる際、奥に控えている永久歯がだんだんと乳歯の歯根に近づき、徐々に乳歯の歯根を溶かしていきます。そうすると、乳歯は支える場所を失って、最終的に歯茎の上に乗っかっているだけの状態になり、食事やなんらかの刺激によりポロッと抜け落ちます。
乳歯のグラグラが全くない場合には要注意
通常、乳歯の裏側から永久歯が生えてきても、後ろから生え始めた永久歯は、舌の力に押されて、だんだんと唇側の方へ移動し、それによってグラグラしている乳歯もそれに押されてもっと唇側に倒れ込むようになりますので、自然に乳歯の脱落が起こります。そのため、永久歯が乳歯の裏側に出てきたからといって、慌てて抜く必要はありません。
ですが、乳歯の裏から永久歯が生えてきたにもかかわらず、乳歯が全くグラグラしていない場合には注意が必要になってきます。これは、乳歯の根っこがしっかりと溶けきれておらず、しっかりと根っこが骨に埋まっている状態であるからです。
この状態だと、永久歯が乳歯の歯根に邪魔されてしまって、本来あるべき位置に生え変わることができない可能性があります。このような場合には、歯科でレントゲンを撮って乳歯の歯根の状態を確認し、早めに抜いた方が良いかもしれません。
グラグラ動いている場合でも注意が必要な場合
グラグラしている場合でも、その状態が長く続く場合には、食事がとりにくくなる期間が長引きますので、お子さんのストレスを早く解消するためにも、積極的な抜歯をおすすめする場合もあります。
また、特に永久歯の場合、歯根が複数ありますので、一部の歯根だけしっかりと溶けきっていないと、いつまでもグラグラした状態が続くことがあります。このような場合でも、放っておけばいつか抜ける可能性が高いのですが、すでに永久歯が下から見えている場合、上に乗っかっている乳歯と、下に控えている永久歯の間に食べかすなどが溜まって、永久歯に虫歯を作ってしまう可能性があります。そのため、リスクを避けるためにも、このような場合、積極的な抜歯をお勧めします。
歯の生え変わりは、正常に行われないと、永久歯の歯並びや骨格の状態を悪くしてしまうことがあります。スムーズな生え変わりのためにも、お子さんの場合、3ヶ月ごとくらいのこまめなペースでの定期検診をお勧めします。