歯が痛いと歯が原因だと疑うのは当然のことかもしれません。ですが、実は歯が痛いと感じているにもかかわらず、歯が原因でない場合というのは決して珍しくありません。
このように、歯が原因でない歯の痛みのことを「非歯原性歯痛(ひしげんせいしつう)」と専門用語で呼びますが、間違って歯を治療してしまうことで、苦しみ続けてしまう場合もあります。
今回はそんな非歯原性歯痛についてご紹介します。
非歯原性歯痛とは
歯が原因ではない歯の痛み
歯が痛いのに、調べても原因がわからないことがあります。患者さんは明らかに歯が痛いと感じ、歯の治療を望みますが、歯が原因でない場合、当然、歯を治療したとしても症状がなくなることはありません。
不必要な神経の治療や抜歯をされてしまうことも・・・
なかには、患者さんがあまりに症状を訴えるので、一か八かという感じで歯を削られてしまったり、神経を取られてしまったり、抜歯がされてしまったり、というようなことが起こる場合もあります。
ですが当然、痛みの原因は歯ではないため、症状が改善せずに歯科医師との信頼関係にヒビが入り、患者さんがいろんな歯医者を転々とする、というようなことを繰り返し、患者さん自身も非常に辛い状況になってしまいがちです。
非歯原性歯痛の具体的な例
非歯原性歯痛としては次のようなものが挙げられます。
咬筋の痛み
噛む筋肉の痛みが奥歯の鈍い痛みとして感じられることがあります。
副鼻腔炎の痛み
副鼻腔には4つありますが、そのうちの一つである上顎洞は上の歯のすぐ上方に位置しています。風邪をひいたりして炎症を起こすと、この上顎洞に炎症を起こし、上の奥歯の痛みとして感じられることがあります。
神経痛
体の神経痛はよく知られていますが、顔面領域にもあります。顔面領域の場合、脳に繋がる神経に障害が起こることで痛みを感じます。一般的には、50歳以上くらいで起こることの多い発作的で瞬間的に起こる神経痛のほか、帯状疱疹ウイルス感染が原因隣、長い時間続く痛みもあります。
頭痛が原因のもの
頭痛(偏頭痛や群発頭痛)が強い歯の痛みと感じられてしまうことがあります。時に激しい痛みとなり、歯の神経の炎症のような痛みとして感じられ、神経の治療をされてしまうことがあります。
心臓の病気が原因となっているもの
狭心症や心筋梗塞が原因となり、左側の歯の痛みを感じることもあります。運動時に発作的に痛みが起こることが多いとされています。
精神疾患が原因となっているもの
うつ病や統合失調症のような精神疾患によっても歯痛が現れることがあるとされています。
原因不明の痛み
なかには、上の何のケースにも当てはまらない、全く原因が不明な痛みもあるとされています。このような歯痛を「非定型歯痛」と呼んでいます。特に40代以上の更年期の女性に多く見られることが多いようです。
非歯原性歯痛が疑われたら何科を受診する?
治療をしているのになかなか良くならない、というような場合、次々に歯医者を変えるという行動に陥りがちです。ですが、どんどんいじるうちにさらに違う症状も重なり、ますます状況が悪化し、本当に何が悪いのか分からず複雑化してしまうことも珍しくありません。
そのため、もし、痛みの原因が不明と診断された場合、早急に歯を削るなどの治療を歯科医師に頼むのではなく、歯以外の原因も疑い、慎重に原因を突き止めていくことが大切です。大学病院などの大きな医療機関によっては顔面痛の治療を専門に扱っている診療科もありますので、担当の歯科医師に相談の上、そのような診療科を受診してみるのも一つの方法です。