親知らずはいつ生える?
痛い?前兆は?
親知らずは、歯列の最奥、前歯から数えて8番目に生えてくる永久歯です。10代後半から、20代前半にかけてのタイミングで生えてくることがほとんどです。
ただ中には、親知らずが生えるのが遅い、親知らずが生えてこない、もともと存在しないという方もいらっしゃいます。
親知らずが生える前兆
親知らずが生える前兆には、以下のようなものがあります。親知らずが生えている/生えていないにかかわらず、20歳頃、一度歯科医院で親知らずの状態を確認しておくことをおすすめします。
- 奥歯のむずむず感
- 奥の歯茎の圧迫感
- 奥の歯茎の腫れ
- 噛んだとき、歯ブラシが当たったときの痛み
親知らずが痛む原因
智歯周囲炎
親知らずはもともと、歯ブラシが届きづらい歯です。汚れが溜まったり、親知らずが周囲の組織を圧迫すると、炎症が起こり、痛みが出ることがあります。
歯茎の腫れも見られます。
むし歯・歯周病
親知らず周囲のブラッシングは難しいため、手前の歯がむし歯になったり、歯周病になったりすることがあります。痛み、腫れ、出血などの症状が見られます。
歯性感染症
智歯周囲炎、むし歯、歯周病の炎症が、顎の骨やリンパまで拡大することがあります。
重症化し、点滴治療が必要になることもあります。
症状への対処法
以下のような方法で、痛みや腫れなどの症状を和らげることができます。ただ、たとえ症状が落ち着いてもその後再発する可能性が高いため、必ず歯科医院を受診するようにしましょう。親知らずの問題だけでなく、むし歯・歯周病が見つかることもあります。
- 歯ブラシ、歯間ブラシ、フロス、洗口液などを使って口腔の清潔を保ちましょう。
- 特に親知らず周辺は、丁寧にケアします。ただし、ゴシゴシと強く磨くことは避けましょう。炎症が悪化する原因になります。
- 痛みがひどく眠れないという場合には、痛み止めの服用も有効です。
- 冷却シートや氷嚢などで、頬の外側から冷やすと、痛みが和らぎます。ただし、冷やしすぎは逆効果になります。長時間の冷却、氷を口に含むといった方法は避けましょう。
なぜ抜かなきゃいけない?
抜歯が必要な場合と
そうでない場合
抜いた方がよい場合
親知らずへの対処は大きく、抜歯か温存に分けられます。以下のような場合は、原則として抜歯をおすすめします。
- 親知らずによる痛み、腫れがある
- 親知らずやその手前の歯がむし歯になっている
- 親知らずを原因として歯周病が発症・悪化している
- 親知らずに噛み合う歯がなく長く伸びてきている
抜いた方がよい親知らずを放置するとどうなる?
抜いた方が良いにもかかわらず親知らずを放置した場合には、以下のようなことが起こります。抜歯・温存の選択は、自己判断ではなく、必ず歯科医院で診断を受けるようにしましょう。
- 痛み、腫れがひどくなる
- むし歯や歯周病を引き起こす、悪化させる
- 歯茎を傷つける(噛み合う歯がない場合)
抜かなくてもよい場合
まず痛みや腫れなどの症状がないこと、むし歯・歯周病の原因になっていないことが大前提です。
上記のような問題がなく、真っすぐに生えている場合には、基本的に親知らずを抜く必要はありません。ただしこの判断も、自己判断ではなく必ず歯科医院での診断をもとに行いましょう。
抜かなきゃよかった!
と後悔しないための抜く
リスクと抜かないリスク
親知らずを抜くリスク
腫れ・痛み
抜歯の際は、局所麻酔をかけるため基本的に痛みはありません。当院では、麻酔そのものの痛みを軽減する工夫も行っておりますので、ご安心ください。また抜歯後の痛みについても、痛み止めを処方いたします。
一方で抜歯後の腫れは、まったく現れない方もいれば、1週間ほど続く方もおられます。一般的には、斜めに生えている親知らず、横向きに埋まっている親知らずなど、難症例と呼ばれる症例で腫れが出やすくなります。仕事やプライベートの予定を確認し、影響の少ないタイミングでの抜歯をおすすめします。
出血・あざ
抜歯後2日程度は、抜歯した部位からの少量の出血があります。口に溜まって不快な場合は、唾を垂らすようにして吐き出してください。ぐちゅぐちゅと口をゆすぐと、血餅(血が固まり始めたもの)が取れて出血がひどくなったり、次にご紹介するドライソケットの原因になります。
また、稀に頬の外側に内出血による青あざができることがありますが、こちらも1~3週間程度で治まります。
ドライソケットの可能性
抜歯した部位から出る血が固まり始めたものを「血餅(けっぺい)」と言います。皮膚でいう、かさぶたのようなものです。
ぐちゅぐちゅと口をゆすぐ行為、歯ブラシとの接触などによってこの血餅が剥がれると、その下にある顎の骨が露出してしまうことがあり、これを「ドライソケット」と呼び、痛みを伴います。ご来院いただき、再度血餅ができるように処置する必要があります。
口臭の可能性
抜歯した部位に食べ物が入り込み、炎症が起こったり、膿が出たりすることで、口臭が強くなることがあります。抜歯したところに入った食べ物は、血餅が剥がれない程度に、優しく口をゆすいで取るようにしましょう。
上顎洞と口腔内が交通する可能性
上顎の親知らずを抜歯した場合には、その抜歯によって上顎洞(蓄膿で膿が貯まるところ)と口腔内が交通してしまうことがあります。
通常は自然に治り(塞がり)ますが、交通した穴が大きい場合には、その穴を塞ぐための治療が必要になります。
下歯槽管神経を損傷する可能性
下顎の親知らずを抜く場合には、その付近を走る神経(下歯槽管神経)を損傷させるリスクがあります。神経が傷つくと麻痺が生じ、その治療が必要になることもあります。
ただ当院では、歯科用CTを導入しておりますので、神経の位置を正確に把握し、神経の損傷のリスクを最小限に抑えることができます。
親知らずを抜かないリスク
親知らず・周囲のむし歯
親知らずが斜めに生えている、中途半端に生えているといったことで、親知らず周囲の清掃が難しい場合には、親知らずやその手前の歯がむし歯になってしまう可能性が高くなります。
親知らず・周囲の腫れ
親知らず周囲の清掃が難しい場合には、親知らず周辺の歯茎で炎症・腫れが起こる可能性が高くなります。また、歯周病の発症や悪化につながることもあります。
将来的に抜歯した場合の痛み
顎の骨は、加齢とともに硬くなっていきます。そのため、年齢を重ねてから親知らずを抜くという場合には、若い頃に抜いた場合と比べて、抜歯時・抜歯後の痛みが強くなることが懸念されます。
妊娠による痛み・腫れの可能性
妊娠すると、ホルモンバランスの変化、つわりによるセルフケアの不足などによって、歯茎の痛み・腫れが出やすくなります。一方で、妊娠周期によってはすぐの抜歯ができません。(痛み・腫れを抑えるための簡単な処置は妊娠周期を問わず可能です)
妊娠を考えている時点で、一度親知らずの状態を歯科医院でチェックしてもらうことをおすすめします。
抜歯後の痛み・
腫れのピークと食事
抜歯後何日くらい痛い?痛みのピークと対処法
抜歯後の痛みは通常、その日の夜か翌日にピークを迎え、3〜4日間続きます。
ただ、処方する痛み止めを服用していただければ、日常生活に支障が出るようなことはありません。
腫れのピークと対処法・早く治すには?
腫れは、まったく出ない方もいれば、1週間ほど続く方もいます。一般には、斜めに生えていたり、横向きに埋まっている親知らずを抜歯した場合に、腫れが出やすくなります。ピークは抜歯の3~4日後で、1週間後にはほとんど治まります。
腫れを早く治すためには、規則正しい生活と、十分な栄養・睡眠が重要になります。しっかり眠るためにも、痛みがある場合には無理せず処方された痛み止めを飲みましょう。
強い痛みや腫れが長引く場合
強い痛みやひどい腫れが5日以上続くという場合には、細菌感染などが疑われるため、まずは当院にご連絡ください。必要に応じて受診していただき、処置をいたします。
いつから普通に食べられる?抜歯後の食事と注意点
抜歯直後
抜歯後、麻酔が切れるまでは、食事を控えます。水分補給は、むせないように注意しながら、少量ずつとしてください。
麻酔が切れてから
麻酔が切れたと感じたら、まずは少量の水を飲んでください。普段通りの感覚で飲み込めそうなら、食事を再開できます。
食事の内容は、あまり噛まなくてもよいものとします。おかゆ、煮込んだうどん、豆腐、煮豆、ゼリー、プリン、ゼリー状栄養食品などがおすすめです。
抜歯後数日~数週間
抜歯から数日が経過し、痛み止めの服用が不要となり、腫れもないようでしたら、通常通りの食事を再開できます。ただし、辛い物、熱すぎるものは傷口を刺激するため、控えるようにしてください。
痛み・腫れがある場合には、引き続き、あまり噛まなくてもよいものを食べるようにします。傷口を早く治すため、タンパク質を多く含むものがおすすめです。
抜歯後の飲酒・喫煙のリスク
抜歯後24時間は、飲酒を控えてください。飲酒し血行が良くなると、出血しやすい状態となり、血餅ができるのが遅れます。
喫煙についても、2~3日はお控えください。血餅の形成・傷の治りが遅くなる、細菌感染のリスクが高くなるといった悪影響が生じます。もちろん、歯周病の予防のためにも、禁煙するのが理想です。